快調に、次々と切る、切る、切る。しかし、翌日は肩と腕の筋肉がガクガクだった。
食切り倒した材木は、専用の運搬機に乗せられ、たまり場の脇にある木場に集積されるのだ。
チェーンソーの刃を研ぐには、熟練の腕が必要なのだとか。決して私が切れなくしたのではありません。
三日も立つと、服はぼろぼろ、ヒゲはぼうぼう。山男より、小汚くなってしまった。腕のイイ人程、汚れないのだそうだ。
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木は倒れた。
間伐成功なのである!
思わず雄叫びをあげそうになる私。
この後、調子にのり2〜3本どころか10本近く倒木を体験させてもらった。
切り倒した檜は、4m間隔で輪切りにされ、ユンボと運搬機を使って次々と木場と呼ばれる、、仮設の集積所に運ばれた。
この日の作業は4時45分にて終了。
「どれくらい木を切るんですか?」
3日目。田部さんにきいた。
「最初に植樹された本数の2/3は切る」
半分以上を切り落とす…。かなりの量だ。
「切らんと、木が育たんのよ。野菜の間引きとおなじ。そんなに切るなというオーナーさんもおるがな」
切った木が完全に成長するまで約20年。田部さんもまた、安藤さんと同じく、20年後の仕上がり方をイメージして切っているのだという。
「間伐材はどうするんです?」
「出荷用は出すがな、それ以外はそのままなんよ」
「もったいないですね」
「 切って加工するまでの費用で、赤字になるから、だれもやらんのよ」
「もったいないよな」と渡部さん。現場で働く人たちも何かに使えないかと考えている。
しかし、一部の地域では間伐材を使った加工品などを作っているところもあるという。
一方で、切ることだけに注目し、伐採は悪と思っている人もやはり多いのだとか。人工林が貯水率を低くし、災害の要因のひとつになっている−。そういう考えだ。
「あんたみたいに、現場に来てくれるのが一番良く分かると思うんだがな」
渡部さんは、杉や檜だけではなく、雑木林の存在に着目し、育てているそうだ。
雑木林は、ねばりのある土壌を作る。杉林や檜林の間に植えるだけで、 自然災害から山を守ってくれるのだそうだ。
「うちも山持っててな。でも、親父は土地がもったいないから、雑木は育てんかった。それでは山は貧弱になるんよ」
山で働く者だからこそ、人工林の弊害もその対策も心得ている。
現場で働く者、林業を営む者は、 山を知り、木の性質を知るプロフェッショナル。誰よりも山のこと、木の事を考えて仕事をしている。
今までイメージの世界だった林業は、今回の経験を通して、確実に身近な存在になった。
3日目の作業終了後はちょっと、涙が出そうになった。たった3日だったけども、山のことや林業のことだけではなく、人との出会いが一生忘れることができない思い出となった。
現場を離れるとき、渡部さんから木材用チョーク、自分の切った杉の切り株などをお土産にもらった。
この場を借りて「ありがとうございました!」。
でも、未だに檜の切り株は使い道が見つかりません。どうしましょう、渡部さん!
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