海も、山も、川も、湖も気持ちのいい季節である。ほんのりかいた汗をさわやかな潮風が瞬時に蒸発させ、山肌を覆うまぶしいばかりの新緑が疲れた目を癒してくれる。家にじっとしているのは、とにかくもったいない。梅雨が始まるまでのあと半月ほど、「この時期に自然を楽しまずして、いつ楽しむ!」と思わず力の入る季節である。
 大型連休には、海と山の両方に出かけた。海の方は会社のスタッフと「釣り&無人島バーベキュー」である。ほとんどが「釣りは初体験」「海に行くのは10数年ぶり」というような連中。ちょっと不安もあったが、うちの会社に入った宿命だ。本人の意思とは関係なく、無人島行きである。「まあ、楽しくやろうよ」的なアバウトなプランを私が考え、当日を迎えた。
 男性スタッフを集めて先発隊を結成。まずはボートに乗って釣りに出かける。仕掛けも、エサ付けも私が行い、ポイントに着いたら「はい、いいよ〜。仕掛けおろして。底に着いたら、2〜3回しゃくってね」と、完全に遊漁船の船頭状態である。しかし、「海の上は気持ちいいっすねぇ、最高っす」とか目を輝かせてくれると、こちらも何だか嬉しくなる。確かに空は雲一つない青空、海はベタ凪という最高のコンディションである。これで最高でないはずがない。
 何とかビギナー2人にガラカブを釣らせ、いったんマリーナに戻ると、今度は後発隊の女性スタッフと合流。「今日はあんまり魚が釣れないみたいだから、イルカウォッチングに切り替える?」と聞くと、いつになく元気な声で「ハイッ」という返事。買い出しに向かった男性陣と分かれ、通詞島沖のスポットを目指した。
 イルカを発見すると、テンションが急上昇。手を伸ばせば触れるくらいの距離まで近寄ると、ワーワー、キャーキャーと大興奮である。「おいおい、そんなに騒ぐとイルカが逃げちまうよ」とニコニコしながらひとり言。会社では見せることのない屈託のない笑顔は、何よりの収穫である。
 無人島へ上陸すると、早速昼食の準備。「無人島バーベキュー」といっても、メインは「そうめん」である。茹でたそうめんをタッパーに詰めて持ち込み、大きな器に盛って水と氷をぶち込んだらできあがり。簡単で、涼やかで、くたびれて食欲がない時でもツルツルと喉越しよく口に入る。汗ばむ季節、海に出た際の定番料理だ。焼いた肉や野菜をおかずに、みんなでツルツル。
 連休後半は、五木の端海野に妹家族とファミリーキャンプである。例によって何の段取りもせず、前日になってあわてて電話をしてみたが、意外なことにあっさり予約が入った。行ってみれば、完全貸し切り状態である。大型連休中にもかかわらず、熊本にはこういうキャンプ場もあるのである。何と幸せなことか。
 ここで大活躍するのは、ハンモックである。ブラジルで買ってきた丈夫な布製なので、子どもたちは3〜4人で潜り込み、大きく揺すりながらのブランコ代わりだ。もちろん、イスやベッドにもなる。大人も子どもも、みんなでユラユラ。
 散歩がてらに摘んできた山菜を天ぷらにして、夕方からビール。ほろ苦い山菜を塩でいただくと、口の中で甘みに変化する。その味覚の不思議を楽しみながら、少しずつ朦朧としていくのである。ああ、何と幸福な瞬間。自然の涼風が山肌を滑り落ち、火照った頬をかすめていく。灯りをつけても、虫も寄ってこず、体もべたべたしない。いつの間にか、ウトウト。
 日本の初夏。梅雨の前の、一瞬。今がアウトドアの旬である。



アウト道(26)

今がアウトドアの旬

家にいるのは、もったいない!

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