うちの会社の忘年会は、設立時から野外でやることになっている。スタッフの慰労会というより、一年間お世話になった方々を招待して、心ばかりのおもてなしをしたいという趣旨の催しだ。
 時期は12月上旬。当然寒い。昨年は凍りつくような雨、一昨年は吹雪だった。それでも毎年、エスキモーみたいな格好をしてみんな集まってきてくれる。大変ありがたいことだ。
 ここで強調したいのは、これが野外同好会の有志の集まりではなく、「会社の忘年会」であるということ。野外が嫌いな方や寒いのが苦手な人もいるだろう。いや、どちらかというとそちらの方が大半かもしれない。加えて、"付き合い参加"もあるに違いない。それなのに毎年リピーターが増えて、今年は参加者が60人を超えるに至ったのは、あまりアウトドアに興味のない方たちを河川敷に集めて、どうしたら楽しんでもらえるかをスタッフのみんなと一緒に一生懸命に考え、それを可能な限り形にしようとしてきた思いがみなさんに伝わった結果かな、などと考えている。そして、それは野外だからこそ生じる一体感に支えられ、寒さによってさらにその思いが強くなり、ここまで続いてきているような気がしているのだ。
 さて、ここで今年の忘年会のメニューを紹介しておこう。まず、恒例になっている「あか牛の丸焼き」。丸焼きといってもさすがに一頭まるごとではなく、漫画の「はじめ人間ギャートルズ」に出てくるくらいの肉のかたまり10~15kgを、専用の丸焼き器でグルグル回しながらあぶり焼き、ナイフで表面をそぎながら食べていくスタイルのものである。最初にニンニクをすり込み、霧吹きに入れたワインとクレイジーソルトをかけながらじっくり焼き上げる。圧倒的存在感とワイルドな食し方が、毎年好評を得ているメニューだ。ちなみに丸焼き器は、稚拙な設計図を描いて鉄工所に造ってもらったオリジナル品である。
 そして、今年のニューフェイスが「石窯ピザ」。前々回だったか、このコーナーでもご紹介した簡単ピザ窯を河原に運び入れ、セルフトッピングでピザ焼き体験をしていただいた。ワイワイ言いながら、ピザ生地にソースをぬり、好みの具をのせ、チーズをたっぷりとふりかけて窯に入れると、3分ほどで焼き上がる。多少焦げていても、灰がついていても、誰も気にする人はいない。一瞬、みんなのアウトドア適応力がグッと上がるのである。これも勢いというか、野外の力だろう。これに、北海道名物「ちゃんちゃん焼き」「熊本産りんどうポーク入りの豚汁」「なんでんかんでんおでん」などが脇を固めた。
 たかだかこれだけのメニューだが、60~70名分を用意するとなると、なかなか骨が折れる。仕事の合間に打ち合わせを繰り返し、前日はスタッフ総出で買い出しに出かけ、借りてきた軽トラックへの積み込みにあたった。特に今回はピザ窯の設置のためにレンガとブロックを大量に運んだので、翌日には筋肉痛を訴える声が続発した。新人スタッフの中には、アウトドアが初体験、火など起こしたことはないという者もいた。そんな彼、彼女らがみなさんにおいしい料理を食べていただこうと、一生懸命慣れない火と格闘している姿は涙ぐましくもあり、誇らしくもあった。
 真冬の河原の忘年会。酔狂な試みではあるけれど、来ていただける方たちがいる限り、これからもずっと続けていこうと、あか牛の肉を焼きながら心に誓ったのである。

アウト道(21)

真冬の河原の忘年会

あか牛の丸焼きに石窯ピザ

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