アウトドアにおける基本中の基本は、火起こしである。風が吹いてようが、雨が降っていようが、的確に材料を現地で調達し、手早く火を起こせるようになると1人前だ。着火材に文句をつけながら、汗だくになって団扇で炭をあおいでいる隣のお父さんを横目に、優越感に浸ることもできる。
 火起こしについてはたくさんのやり方があって、これが正解というようなものはないが、一番オーソドックスで間違いのない方法をひとつだけ紹介しておこう。
 まず、大切なのは薪集め。割り箸より細いものから、腕の太さくらいのものまでを、ナンバー1からナンバー5まで5段階に分類しながら拾い集める。これを適当にやると、火はつかない。また、長さや細さを調整するために、ナタやノコギリがあるとベスト。もし、薪が湿っていたら、ナイフやナタで切り込みを入れながら、ささくれ立った状態にしておく。
 後は簡単。新聞紙かティッシュペーパーを丸め、それに立てかけるようにそっと一番細いナンバー1の薪を円錐形になるように立てかけていく。ぐるりと一周立てかけたら、次にナンバー2を同じように立てかけ、重ねていく。ナンバー3の薪を立てかけたところで新聞紙もしくはティッシュに着火。なるべく下の方から3カ所くらいに火をつける。すると、あらあら不思議、団扇で扇いだりしなくても勝手に火が起きていく。火が大きくなってきたら、ナンバー4とナンバー5を順次円錐形になるように追加していくのだ。これで、まず失敗はないはず。炭を使う場合は、この状態になってから投入していく。
 当然、この方法はバーベキューコンロの中でも応用できるが、下がスノコ状になっていると細い薪が落ちてしまうので、一番下に新聞紙を広げておくといい。とにかく、準備は念入りに、着火後は手を出さず、黙って見ているだけというのが実に男らしい着火法である。
 野外で火を起こす目的は、調理と焚き火である。最近は、調理もストーブなどでやることが多くなって、キャンプに行っても火起こしはしないという人がいるようだ。焚き火禁止のキャンプ場も少なくない。ただ、私にいわせれば、楽しみの半分を置き去りにしているような気がするのである。
 チロチロと燃える火をいじりながら、気のあった仲間と酒を酌み交わしながら愛でる焚き火は、アウトドアの醍醐味だ。料理も焚き火で作る方が、断然うまい(ような気がする)。
 焚き火の前では、いつになく、素直になれる。柄にもなく、哲学者になれる。虚勢を張ることなく、優しくなれる。
 焚き火には、そんな力がある。

アウト道(12)

焚き火賛歌

火起こしはアウトドアの基本

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