アウトドアの醍醐味のひとつに"不便を楽しむ"ということがあると思う。野外は不便なことが多い。でも、不便だから工夫するのだ。遠くの水場まで汲みに行くのが面倒だから、少しの水で用が足りるように工夫をするのである。「水を出しっぱなしにしないで! ためて使いなさい!」と家でお母さんにいわれていることを、自らの体で実感し、行動するのである。ここのところが大事。
 だから、あまり設備の整いすぎたキャンプ場はいかがなものかと思うのだ。専用の水場があって、蛇口をひねればいくらでも水が出てくるようなキャンプサイトに泊まっても、水のありがたみは感じずに帰ることになる。
 そんな"アンチ便利派"の私が、「これだけは見逃してください!」といいたくなるのが、野外で入る風呂である。ひとつだけ断っておくと、この風呂は体をきれいにするのが目的のものではない。風呂そのものを作る楽しみを体感し、自然と裸の付き合いをするのが目的なのだ。その意味で便利さ、快適さを求めているのではないことを、無気になって言っておきたい。
 さて、野外での風呂といえば、ドラム缶風呂である。インターネットで調べてみたら、既製品を3万円で売っていて、ちょっとビックリ。基本的には自作となるが、要は上部をくりぬいて、中をきれいにすれば出来上がりである。下部に水抜き用のコックを付けたり、かまど部分を溶接したり、凝ればきりがないが、基本はシンプルきわまりない。中の油が気になる人は、新品のドラム缶を買えばいい。
 ドラム缶風呂を成功させるためのポイントは、まずかまど部分を安定させること。不安定なところにドラム缶を置いた時の惨劇は、目にあまるものだ。大きな石を拾ってきてかまどにする方が風情はあるが、安定性の面ではどうしても不安が残る。美しくはないが、ブロックを使う方が無難。U字溝ブロックも使い勝手がいい。
 もうひとつのポイントは、入り方。ドラム缶の底は当然熱いので、丸形にカットしたスノコを敷くか、下駄を履いて入ることになる。スノコは浮いてくるので、足で抑えながらまっすぐに沈めていくのがコツ。ドラム缶が倒れる可能性が最も高くなる時でもあるので、ものすごい格好を見られることを覚悟の上、できれば人にドラム缶を支えてもらって入ることをおすすめする。入るためのはしごか、踏み台も必要。お湯は30〜1時間もあれば十分入れるようになる。満天の星空の下で入る風呂は最高、特にこれからの季節は想像を絶する気持ちのよさだ。子どもたちにも大変いい思い出になる。

アウト道(6)

野外で風呂に浸かる

満天の星空とドラム缶

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