「無人島」という言葉に、めっぽう弱い。この言葉を見たり、聞いたりすると、どうも落ち着かなくなる。ソワソワ、ワクワクしてきて、地図や海図をめくり始めたりする。
 この衝動の根底にあるのは、間違いなく「十五少年漂流記」と「ロビンソン漂流記」だ。非日常的な極限状態の中で創意工夫を重ねながら問題を解決していく様に、少年の無垢なる心は躍らされたものだが、恥ずかしながら35年後の今でもそれを引きずっているのである。個人的にこれを"漂流願望"と呼んでいるが、無人島キャンプはお手軽にその欲求を満たす「プチ・サバイバル体験」という位置付けなのだ。
 「無人島」には、便利なものは何もない。基本的に、水も電気もトイレもない。最新のキャンプ用品を持ち込もうと思っても、船で渡らなければいけないので限界がある。物理的な制約から開き直りが生まれ、「それならいっそ、道具をなるべく持ち込まないでサバイバルキャンプを楽しんでみよう」という発想に至るわけだ(至らない人もいると思うので、そういう人はこの後は読み飛ばしてください)。
 便利なものは何もないが、無人島の浜にはありとあらゆるものが打ち上げられている。流木、ロープ、竹、ペットボトル、発泡スチロールの箱、壁板など。日常生活の中ではゴミでしかないこれらのものが、アイデア次第では多機能な便利グッズに変身する。以前、テントもシュラフもランタンも持ち込まず、ナイフと鉈、のこぎりと鍋一つ、それに水と米だけでキャンプを楽しんだことがあるが、この時は流木とロープと笹で簡易小屋を作り、捕獲した魚と貝で腹を満たした。また、「自分のリュックに入る分だけの荷物持ち込み可」という条件のもと、10家族ほどを無人島に案内したこともある。持ち込む道具の種類と量は、アウトドアの経験と適応性によって判断すればいいが、私は少なければ少ないほど楽しいと思う。その限界に挑戦するのも悪くない。足りないものがあっても、コンビニに買いにいくわけにはいかないのだ。その緊張感が刺激的なのである。
 熊本には無人島がたくさんある。ビギナーの方には黒島(天草市御所浦町)、産島(天草市河浦町)、五色島(天草市本渡町)などがおすすめ。天草には海上タクシーなる便利なものがあって、体と荷物は指定の島へ運んでくれる。ただし、夏休み期間中は間違いなく"有人島"になっているはず。本当の無人島サバイバル体験がしたい方は、多少なりともアドバイスができると思うので、左記ホームページ経由でメールにてお問い合わせを。

アウト道(4)

無人島キャンプ

プチ・サバイバル体験を

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