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第09回 2002年11月28日掲載


ついに契約、そして警告

 その日は、ついにきた
 鹿北町役場の田中さんから、契約の準備が整った旨の電話が入ったのだ。
 さっそく、山林の持ち主である太田黒さんの家を田中さんと共に訪ねる。太田黒さんは、始めて会った時の気難しい印象は微塵もなく、笑顔で気持ち迎えてくれた。
 交わすのは「土地利用契約」。太田黒さんが所有する1287平米のうちの40平米を借りることになる。ここが小屋の建設予定地となるわけだ。契約は1年で、利用料は8000円。
 和やかな雰囲気の中で契約書の取り交わしが終わった頃、太田黒さんがポツリとつぶやいた。
「くれぐれも気を付けてナ」
「えっ、何がですか?」
「イノシシたい。あのへんはウヨウヨおるけん」

「はあ…」
 正直、まだ野性のイノシシと直接ご対面したことはない。手負いじゃなければ大丈夫だろうぐらいの、根拠のない認識しかなかったが、どうやらそうでもないらしい。
 以前、太田黒さんが山仕事の後、林道沿いの石の上に腰掛けていたら、大型のイノシシがゆっくり近づいてきたそうだ。
 大きな声では言えんけどナと前置きしちゃ上で「そらあ、怖かったけん」
、動かずにジッとしていたという。大声を上げても我関せず。結局、悠々と太田黒さんの横を歩いていったそうだが、山伏のような人が怖いというのだから、相当に怖いのだろう。
「それに、畑をやるんなら、根モノは植えても 植えても、全部食べられるけん」
 どうやら畑の柵は必需品らしい。実際、地元に人たちは、電気柵でイノシシ対策をしているようだ。しかし、我等の土地には電気などあるはずもない。決してイノシシが越えることも、くぐり抜けることもできない頑丈で、高くて、緻密な柵を作る必要がありそうだ。その前に、小屋を柵で囲わなければいけないかもしれない。
 う〜ん、面白くなってきたぞ!
(つづく)

▲ついに迎えた契約の時。夢の実現へ向けて、やっと最初の1歩が踏み出された感じ。




▲太田黒さん


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