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第07回 2002年10月31日掲載


もう一人の協力者

 鹿北町役場の田中さんから待望の電話があったのは、太田黒さんとの面 会から数カ月経ってからのことだった。
「土地を管理している人が見つかりました」
 話を聞くと、どうやら登記上の所有者は現地にいらっしゃらないらしく、地元に住む親戚 の方に管理を依託しているとか。その人が会ってくれるというので、さっそく訪ねてみることにした。
 交渉を予定している土地の、山を挟んだ裏手の方に家がある松永さんというお宅だ。
「何ばしなはっとですか?」
 例によって、反応を確かめながら、
ひと通 り説明をする。松永さんはかすかに笑みを浮かべながら、黙って聞いている。

「という訳で、あの土地で畑仕事の代行をやらせてもらいたいんですが」
 農地として登記してある土地の貸し借りに関しては、農地法で色々と制約が設けられている。簡単に借りるというわけにもいかないのだ。したがって、所有者がやる畑仕事を、代わりにやらせてもらうという形になる。
「よかっじゃなかですか。あそこはうちが管理ば任されとるばってんが、全く手付かずになっとるけん。栗も最近は拾いに行っとらんし。荒らしとくより、耕してもろた方がよかでしょう」
 あっけないほど、快諾してくれた。
「ありがとうございます」
「持ち主にも電話で報告しときますが、まず大丈夫でしょう」
 ついに、畑をやる土地を確保できた。しかも、理想の場所に。
 しかし、もうひとつ問題があった。こちらは農地なので、小屋を建てることができないのだ。う〜ん、太田黒さんの土地は小屋は建てられるけど、石がゴロゴロで畑ができない。松永さんの土地は畑はやらせてもらえるけど、小屋が建てられない。いったい、どうしたらいいんだ!

「小屋を建てるのは太田黒さんの土地、畑をするのは松永さんの土地ということでやるしか方法はなさそうですね」
 田中さんが結論を出してくれた。そうか! そういう方法があったか。
「もう一度、太田黒さんに確認をとった上で、正式に契約を結びましょう」
 何と心強いお言葉、何と頼もしい田中さん。仕事が終わった後のプライベートな時間を使って、ここまでの面 倒を見てくれるのだ。自然と頭が下がる。

 こうして、週末の隠れ小屋プロジェクトは本格始動へ向けて、大きく1歩前進したのである。
(つづく)


▲松永雅雄さん。親戚である土地の所有者から管理を依託されている。地元で仕出屋を営んでいるとか










▲少しずつ実現へ向けて動き始めたプランの要となる、鹿北町の候補地


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