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第04回 2002年10月10日掲載


運命的な出会い

 場所探しと平行して、小屋の設計図を作ることにした。
 ただ、小屋とはいえ漠然と想像はつくものの、具体的にどんな構造で、どのくらいの材料がどれだけいるなんてことは皆目見当がつかない。
 そこで、幼馴染みの一級建築士に設計を依頼することにした。設計料は出世払いの催促なしである。

 僕が出したリクエストは、
1、8畳くらいの広さがあって
2、ちょっと広るめのデッキがあって
3、高床式で湿気の少ない造り

という欲のないもの。
 友達は3日後には、図面を抱えて現れた。
「随分、立派だなあ」
「これでも柱なんかは最低限の太さにしてあるし、構造上も倒れん程度たい」
「こんなの本当に自分で作れるかなあ」
「壁や床の材料は別にして、全体の枠組みに使うもんだけは、プレカットしてもらってた方がよかろうね」
「プレカットって、そんなことまで製材所に頼んでたら、高くつくだろう」
「まあね」
「これだけ頼んで、材料費はどのくらいかかる?」
「40〜50万ってとこかな」
「そ、そんなに!」

 そんな予算はどこにもない、全くない…。
 さてさて、立派な設計図ができたはいいが、これをいかに安く、できれば廃材や間伐材などをうまく利用して、限りなくタダに近い金額で完成にこぎつけるように算段しなければいけない。



▲正面からみたところ





▲後ろからみたところ


▲上からみたところ

設計:乙丸設計事務所


よくわからないけど、ここは一応道である。この道の先についに…!

 鹿北町役場の田中さんから連絡があって、いくつかの候補地を案内してもらえることになった。
 このあたりには離農された方もかなりいるらしく、その人たちの家が主を失い、放置されているということだった。
「ここなら家も含めて、畑と込みで自由に使っていいですよ」
と何度も、夢のような話をいただいた。
 しかし、不思議なことに立派な家を前にするほど、ワクワク感は色褪せてしまい、口数も自然と少なくなるのだった。
「できれば更地で、一から小屋や畑を作るようなところがいいんですけど」
などと、贅沢なことをブツブツと口の中で呟き続けるのだった。

 10カ所近く、見て回っただろうか。反応の鈍い僕の態度にイライラする素振りもみせずに、
「そういえば、ちょっと気になってるところがあるんですよね」
と、田中さんがつぶやいた。
「ちょっと行ってみましょうか」
「喜んで!」
 何となく、予感がした。運命的な出会いの予感である。
 アスファルトの道から林道へ。細い川に添って急な坂道を登っていくと、それまで頭の上を覆っていた山と木立が突然消え失せ、視界がパッと広がった。足下には、清流が流れている。

「こ、ここです。僕が探していたのは…」

  (つづく)


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