畑らしきものができたら、何やら植えてみたくなった。生来のせっかちである。手伝ってくれた新川さんも同じ気持ちのようだ。
「タネ買ってきましょうよ」
山を下りて、小さな雑貨屋でホウレン草とブロッコリーのタネを購入。葉ものなら、とりあえずイノシシに狙われる心配もない。それに秋に植えて春前に収穫ができる。耕しもせず、肥料もやらず、土も改良せず、そのまま穴を掘って、種を捲いたのだった。この土地がどのくらい畑に向いているのか、試してみたい気持ちもあった。
作業が終わって昼食。タネと一緒に買ってきた弁当である。早くこの場所にかまどを作り、手軽に調理できるようにしなければいけない。そのためには水も引かなくては行けない。動力を使わずに低い場所から水を上げるためにはどうしたらいいのか。そんなことを考えているとワクワクしてくる。
小屋を建てる前に、やらなければいけないことはたくさんあった。一段高くなった畑のスペースへに行き来がしやすいように階段も作らなければいけない。当然、春までには本格的に畑を耕さなければいけない。トイレも必要だ。当面
、作業道具を格納するロッカーみたいなものもいるだろう。食事や休憩のためのテーブルや椅子も作りたい。
ああ、今が一番幸せな時かもしれない…。
(つづく)
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