私の林業スタイル。作業後に気付いたことは、木屑が入らないように、袖、裾、襟には隙間を作らない方がイイということ
秋岡さんの足袋。足の裏にはスパイクが着いており、どんな足場でもがっちり体制を固定してくれるはずだったが。履くことはできなかった…
渡部課長。この方のアドバイスがなければ、私は幾つの生傷を作っていたことか
次回からの舞台となる、安藤さんの山の入口。入ってすぐのところに、イノシシ用の罠がしかけてあった。すごく無気味なオーラを感じた
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今回から2回にわたり、当コンテンツ担当ライター森が、大分県大野町で三日間にわたり「間伐」を体験してきた模様をお送りいたします。
11月13日。深夜5時。
半ば仕事をほっぽりだしたかたちで、帰宅。
部屋の明りもつけず、タンスから、破れかぶれのジーパン、POLOっぽいトレーナー、バッタもの臭いNIKEのウインドブレーカーをひっぱり出す。
続いて玄関へ向い、レッドウイングっぽいワークブーツの埃をはらい、物置きから軍手を出して、2〜3日分の下着と一緒にリュックに詰め込み、準備終了…。
一度全てを装備してみる。
ファッションセンスもあったものではない。
「作業ができる格好で来てください」
大野町から「間伐体験」のオファーを頂いた時、大野町役場の秋岡さんから、事前に服装のアドバイスをいただいた。
「体験ですけど、あくまでも、実作業を手伝ってもらうことになりますから」
「え? あ、はい、がんばります」
「体験」と「作業」の間にどれくらいのギャップがあるかは、全く見当がつかない。
「安全靴もってます? ほんとは足袋がいいけど」
「 あ、いえどちらも…」
「それから、朝夕はかなり冷えるから、防寒対策もしといてください。汗拭き用のタオルも」
「 足袋は?」
「危険な作業もあると思うので、ほんと気をつけてくださいね。
じゃあ、13日の10時半に役場前で」
ガチャ。ツーツー…。
秋岡さんの言葉の中に、「楽しいよ」「見学と思って」などといった、「遊び」を感じさせる言葉はなかった。ああ、そうですよね。遊びじゃないですよね…。
そして、当日の朝。睡眠時間約3時間という状態で、住まいの熊本県山鹿市から国道325号→国道57号線を経て約2時間半。一路大分県大野町へ向ったのである。
大野町に着くと、役場の方々への御挨拶もそこそこに、森林組合のある緒方町へ直行。なにせ、着いた初日から作業が始まるのだ。全てが急ピッチ。期待や不安がよぎる暇すらあったものではない。
「はじめまして。熊本から来ました。この度はお願いします!」
森林組合に着くと、秋岡さんから森林組合の担当の方を紹介していただいた。
「渡部です。よろしくお願いします」
このとき、心無しか、渡部さんの少々困惑した視線を感じた。なに? 何か変なんですか、私?
「あの、これで…。作業されるんですか?」
「あ、はい。汚れてもいいようにですね…」
あきらかに、渡部さんの表情は、「気持はわかるけどねぇ」といった感じ
。そんな渡部さんを見ていると、私のやる気や自信もほそぼそと縮まりかえり「大丈夫なの? 俺の格好?」と、不安が過る。
「靴はともかくとして、ズボン…。それはやめた方がいいですね」
破れたジーパンは、破れた隙間から木の枝や、虫、蛇、木のクズなど、山の生物たちがたくさん入ってくるのだそうだ。真面
目に言われてしまうと、こちらも本気で不安になる。しかし、着替えなど持ってきていない。だからといって、このまま現場に行けば、事故の元にもなりかねない。
「ちょっと、服替えましょうか。足袋は私のが合うかも知れない。役場で貸しましょう」
森林組合からの帰り道、秋岡さんも私の格好を気にしていたようで、衣裳替えの指示が出た。結果
、 「ファッションセンターしまむら」へ。890円でチノ生地のズボンを購入。しかし、秋岡さんの足袋は小さすぎて、履くことはできなかった。足元に不安を残しつつも、なにはともあれ、戦闘体制が整ったのである。
そして、腹ごしらえを終えると、いよいよ本日からの現場となる、「安藤さんの山」へと向ったのである。
(つづく)
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