野外料理の醍醐味は、誰が何と言おうと「生の火」を扱うことにある。だから、ホワイトガソリンのバーナーコンロやガスの調理器具での炊飯は、野外料理としてみとめない。それは、大人の贅沢なままごとだ。
「生の火」を使った料理の中でも最も野趣に富んでいるのが、焼いた石を使うものだろう。近いところでは対馬の伝統的な漁師料理に「石焼き」というのがある。平たい石を焼いて、その上で魚や野菜を焼いて食べる料理だ。熊本には「溶岩焼き」がある。瓦そばもある。また、遠く秋田県の男鹿半島の漁師料理には「石焼鍋」というのもある。秋田杉の桶に入った味噌汁の中に、真っ赤に焼けた石を放り込み、一気に沸騰させるという豪快な料理だ。
ただし、この程度のことなら、野外好きの方なら皆さん経験がおありだろう。さほど目的意識がなくても、焼けたかまどの石で肉や野菜を焼いたり、冷たくなったコーヒーの中に小さな焼けた石を放り込んでみたり、なりゆきで石焼料理を楽しむことになるケースは意外と多いものだ(私だけ?)。
余談になるが、以前、この石焼鍋の原理を応用して、河原に露天風呂を造ろうとしたことがあった。砂地を選んで穴を掘り、ブルーシートを敷き込み、川の水を組み入れる。そこに熱々に熱した石をガンガン放り込み、風呂を仕立てようという試みである。
結果はというと、見事に失敗した。水量に対し、圧倒的に焼け石の量が足りなかったようである。なまぬるい程度の露天風呂が、寒々しい河原に出現するにとどまった。
さて、家でよくやる石焼きといえば、定番の「焼き芋」だ。ダッチオーブンの中に小石を入れ、空焚きした後に、これから旬を迎える「甘藷」を入れる。ものの見事においしく仕上がる。詳しいことは分からないが、おそらく遠赤外線とかが関係しているのだろう。ふかしたり、レンジでチンするより何倍もおいしい焼き芋が仕上がる。
そして、最近のお気に入りが石窯ピザである。「すぱいす」という熊日の生活情報紙で『自宅に手作りピザ窯を』という企画をやらせてもらう機会があった。予算は1万5000円。制作時間が30分という、超お手軽ピザ窯である。取材の前にテストと称して、自宅の庭に窯をこしらえてみた。耐火レンガと鉄板、板石だけで簡単にできるのである。しかも、モルタルで固定もしないから、飽きたらすぐ分解できるところがいい。レンガで作った箱の中で薪を1時間ほど炊き、置き火になったところで灰を周囲によけ、ピザを差し入れる。すると3分ほどで、外はカリカリ、中はふっくら、ジューシーなピザが完成するのである。これはもう、感動ものだ。こんなに簡単、手軽、最高にうまいピザが、自宅で作れるなんて…。詳しい作り方は、10月20日に発行になる「すぱいす」に出るはずなので、手に入る方は参考にしていただきたい。
さあて、やっと涼しくなってきた。火が恋しくなる季節、アウトドアが最も快適な時季である。腹も減ったし、家の中に閉じこもっている場合ではない、かもよ。アウト道(19)
深まる秋の石焼き料理
野趣に富んだ遊び心を
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