野外料理の話の第二弾。家の中では絶対にできない料理、薫製の醍醐味について触れてみよう。
 元々、薫製は保存食を作るための手段である。理屈はよくわからないが、肉や魚に煙をかけることで、細菌の繁殖や脂の酸化を抑えるフェノール系化合物、有機酸などができるのだそうだ。冷薫と呼ばれる方法で作るスモークサーモンや生ハムなどがその代表だが、下処理、塩漬け、塩抜き、風乾、燻煙という過程が必要で、全行程は3日〜2週間にもおよぶ。おまけに低温で長時間燻さなかければいけないから、温度が上がりすぎない大きくて本格的なスモーカーが必要になる。風乾も気温が高すぎてはいけないので、作れる季節が限定されてしまうのだ。
 しかし、キャンプなどで薫製を楽しむ場合は、保存食と作るというよりその風味と作る過程を楽しむわけだから、なるべく簡単で失敗のないものの方がいい。その意味では、比較的高い温度で燻す温薫、熱薫とよばれるものの方が適しているだろう。
 必要なのは、スモークチップ、燻製器、そして熱源。スモークチップはアウトドアショップなどで購入。薫製器は、最初は段ボールで代用してみよう。熱源となるストーブ(ワンバーナーの方が使いやすい)の上にアルミの皿を置いてチップを乗せ、石やブロックなどで組んだかまどの中心に置く。段ボールは内部の上の方に材料を乗せるための網を固定し、下部は切り取る。側部は扉として開くようにカッターで切り込みを入れておく。後は火をつけ、段ボールをかまどの上に置けば薫製がスタート。材料は、チーズ、かまぼこ、ソーセージ、メザシ、アジの干物、ゆでたまごなどがいいだろう。保存性はないが、絶品の酒の肴が簡単にでき上がる。初体験の時の感動はかなりのものだ。
 さて、キャンプでの手軽な薫製で味をしめたら、温薫で作るベーコンやロースハムに挑戦してみよう。自宅の庭でやるちょっと本格的なスモークだ。できれば、薫製機はちょっと大きめのものを自作したい。作り方はホームページなどにも詳しく紹介されているので、そちらを参考に。
 少し風がやわらかくなり始めた3月の午後。下ごしらえしておいた材料を午後から燻し始め、ジャケットの襟を立てて、コーヒーでも飲みながら、ゆったりと煙の番をする。そして、ちょっと早めの夕食。自分で作った薫製でやる一杯は最高。何とも贅沢な早春の休日になる。

アウト道(10)

野外で薫製に挑戦!

早春の午後、贅沢な休日


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