アマゾン川まで釣りに行って、ボウズだったことがある。
 成田からロス経由でサンパウロへ。そこから国内線に乗り換えて、マガダンというアマゾン中流域の町へ。24時間かかった。さらにそこでクルーザーをチャーターし、船の中で寝泊まりしながら3泊4日の行程で川をさかのぼり、無数に入り組んだジャングルの中の水路に小舟で入っていき、魚を釣るのである。「そんなところまで行けばボウスのはずがない」と思われるだろう。私もそうだった。「遠くに行けば釣れるはず」という思いが、釣り人には共通してあるものだ。しかし、地球の裏側まで行っても、釣れない時は釣れないのである。

 お台場からカヌーを出し、シーバス(スズキ)を釣っていたら、海猿(海上保安庁)に怒られたことがある。確かに怪しかった。夜9時頃、華やぐお台場のビーチから音もなくカヌーで漕ぎだし、明かりもつけずにレインボーブリッジの橋脚まわりをルアーで攻めていたのである。しかし、密輸や密航を疑われたわけではなかった。問題はそこが本船航路であったこと、夜なのに航海灯を点灯していなかったことの2点だった。「何万トンという小回りの利かない大型船が行き交う本船航路の中を、非動力船で明かりもつけずにウロウロするなんて言語道断」というわけである。

 紀伊半島の南端でカジキ釣りをしていたら、船が転覆しそうになったことがある。太平洋を渡ってくるとてつもなく大きなうねりと、勢いを増し始めた風波がぶつかり合い、海がグシャグシャになっていた。頭の上から波をかぶり、デッキ上のものの多くが流された。本気で遺書をボトルレターとして流そうかと思ったが、何とか一命はとりとめた。

 天草は、ボートで釣りをするには天国のようなところである。特に有明海、不知火海は周囲を陸地や島に囲まれた内水域で、外海に3〜4mの波があっても、常時50cmほどの波高に留まっている。うねりが入ってくることもなければ、タグボートで押さなければいけないような大型船が行き交うこともない。島がたくさんあって景色はいいし、流されても必ずどこかの岸にたどりつく。タイ、アジ、イカ、メバル、ガラカブ…。食べておいしい魚もたくさんいる。こんな好条件の水域は、日本中探してもそうはないのだ。もっと、船釣りを楽しまないともったいない。
 さて、年末の目標は正月用のブリとタイを釣り上げること。北西の風が吹いても、天草下島の東岸は風裏となる。長島海峡でジギングである。専用の遊漁船も出ている。みなさんも、いかがだろうか。

アウト道(8)

天草は船釣り天国

正月用のブリとタイも

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