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久しぶりのベッド


壊れた魚探。これまでの航海の辛さを思い出す



 

 プランを立てる際に、ちょうど中日にマリーナ泊を入れる事にしていた。
  アウトドア的気分を味わうために、基本的には漁港かビーチ泊を前提としていたが、疲れとメンテナンスを考慮して1日だけは楽をしようと思ったのである。

  新門司マリーナは、以前の仕事で何度か訪れたことがあって多少の地の利はあったし、設備も整っているので何かと心強かった。

 冷房のきいたクラブハウスに入ると、生き返るようだった。シャワーを浴びさせてもらい、ビールをのどに流し込むと、しばらく忘れていた日常的な感覚が戻ってきた。と同時に、気になりだした。仕事の事である。

 出港したのは7月31日。すでに11日が経過している。うまくいけば1週間、かかっても10日を予定としていたから、帰港予定は過ぎているという事になる。仕事の段取りも10日の休みを前提にしてきたので、色々と支障が出てきているはずなのだ。

  幸か不幸か、初日に携帯電話を海水に浸けてしまっていたので、先方から連絡が入る事はなかった。音信不通 状態が続いていたのである。それまでは考えても仕方ないと、気にしないようにしていたが、冷房のきいた快適な空間は一気に現実へと引き戻してくれた。

 公衆電話から仕事先へ連絡を入れてみる。お盆前だという事もあって「お盆休み明けでいいですよ」という返事が大半だった。さすがに、それまでには帰れるだろう。多少、安心する。

 この日は、もうひとつ楽をするプランがあった。マリーナの近くにある高橋さんの親戚 の家に泊まる事になっていたのである。
  波のショックでマウント部分がガタガタになっていた補機の修理と、GPS点検をマリーナに頼み、タクシーに乗り込む。ボートのそばを離れられるというのも、マリーナのいいところだ。

 その日は久しぶりの手料理と布団の感触を堪能しながら、冷房のきいた部屋で快眠に抱かれたのであった。(つづく)

新門司マリーナのクラブハウス。レストランやマリンショップなども併設していて、陸上からのお客さんも多い。


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