8月10日。朝から気持ちよく晴れわたっていた。風も落ちている。簡単に前夜の残り物で食事を済ませると、午前8時に出港。どうにも諦めきれなかったので、ちょっとだけアジ釣りをしてみたが、結局関アジの壁の厚さを実感するだけに終わった。
佐賀関から国東半島の先端を目指して真直ぐに走る。この日は新門司までの63マイルの行程。5500回転、20〜21ノットでの順調な走りだ。操船もシートに座ったまま。こんなことはこの航海中、初めてである。
天気はいいし、波はないし、陸地の風景も変化があってなかなかに楽しめる。
「いいですね、のんびりしてますね」
「気持ちい〜。夏のクルージングはこうでなくっちゃね」
GPSはやはり接触不良のようである。電源のコネクター部分をグリグリと押さえ付けると、時折ピコッという音がして画面
が表示される。
しかし、何かの拍子にショックが加わるとまた消えてしまう。仕方がないので時々無理矢理立ち上げては自船位
置を確認するという作業を続けた。
国東半島を回ると東の風が強くなり、18ノットまでスピードを落とす。新門司を目前にして大きな横波の連続に襲われ、また濡れネズミになったが、それまでにくらべると何でもなかった。
午前12時半、新門司マリーナ到着。あまりにあっけない行程であった。予定平均速力18ノットをオーバーして走れたのは、初めてである。
桟橋に着岸。ボートを舫うのも、荷物を降ろすのも楽である。やっぱりマリーナはいいなぁ、と実感。ただし、作業をしていると容赦ない8月の太陽がチリチリと音を立てて肌を灼いていくのがわかった。
すでに2人共、肌はゴキブリ色である。
(つづく)
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