カンカンに焼けたコンクリートの上では、年齢不祥の女性がサビキでアジゴを釣っている。
慣れた手つきでアミカゴにマキエを詰めると、ドボンと海の中に落し込む。10秒もたたないうちに竿を上げると、10cmにも満たないようなアジの子供がバラバラと食い付いている。
彼女は無表情で氷の入っていないクーラーに魚を入れると、また同じ動作を繰り返す。
「よく釣れてるね」
「うん。今は潮がいいけんね」
分ったような事を言っている。
「ここにはよく来るの?」
「うん。毎日来とるよ」
「毎日!? もっと大きいアジはどこで釣れるんだろうね」
「ワタシはここでしか釣らんけん、わからん。ここのは小さいけん」
とにかく、給油をすることにした。堤防沿いに通りまで歩くと、すぐにガソリンスタンドが見つかった。ローリーをボートの所まで持ってきてもらうように依頼する。釣具屋を訪ねると、車で7〜8分、歩くにはちょっと遠いとのこと。氷や撒き餌を買うとなるとちょっと辛い。
「乗せていきましょうか」
スタンドの女性が声を掛けてくれた。願ったり、叶ったりである。高橋さんが同乗してエサを買い出しに、こちらはボートでローリーが来るのを待つ事にした。
(つづく)
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