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波間に見え隠れする漁船を追尾


漁船を発見したので曵き波の後ろを走る。細かい波を潰してくれるので、随分と楽な走航になった

 

 8月8日、12時45分、3泊4日を過ごした内之浦港を出港。南東の風が6m、波、うねり共に3mという予報下、宮崎までの50マイルの行程である。空は薄曇り、雨の心配はなさそうだ。

 まずは内之浦から都井岬まで、北東に直線コースを取る。ほぼ真横から波を受ける格好だ。港を出るとすぐに湾口なので、外洋のうねりも直接受けることになる。

 11時の方向に都井岬。近づくにつれて、波は複雑かつ大きくなっていく。回転数は平均すると5000で15ノット前後がやっと。3〜4mのうねりの山を乗り越える時には、ウ〜ンとエンジンが苦しがり、スピードもガクンと落ちる。逆に下る時は25ノット近くまで上がるので、そのまま谷間に突っ込んでいくと船首が突き刺さってしまう。落ち込む寸前にスピードを落とし、船首が浮き上がるようにスピードをコントロールする作業が延々と続いた。

 13時5分、都井岬が9時に見えたところで、北に転針。今度は右斜め後ろからの波である。
 前方にその日初めて見る他船を発見。中型の漁船だ。意識的にスピードを上げ、船尾に向って近づいていく。50mくらいまで近づくと、スピードを本船に合わせ、ぴったりと後ろを走っていくようにした。スピードは10ノット程度である。

 漁船が細かい波を前でつぶしてくれるので、随分と楽になった。船尾のブリッジには人が出てきて双眼鏡でこちらを覗いている。やたらに手を振って、救助を求めていると誤解されてもいけないので、シートに座わりタバコに火をつけて余裕をアピール。しばらくすると、ブリッジからは人の姿も消えた。

 実際、うねりが大きいわりには10ノット前後での走航は楽だった。それでも、こちらがうねりの谷間にいて、商船がうねりの向こうにいると、完全にその姿が見えなくなるような状況である。
「でも、他の船が見えてるとホッとしますね」と、すでにスプレーでずぶ濡れの高橋さん。ハードな走航にもかなり慣れてきたようだ。
「本当に」
 考えてみれば、これまでほとんど他の船の姿が見えない状況の中を走ってきた。人の気配を感じるだけで精神的には心強いものだ。

 1時間ほど漁船の後ろを走航。都井岬をかわすと、かなり波の状況もよくなった。漁船のスピードに合わせて走るのがかったるくなり、加速して曵波の外へ出る。また、細かい波に叩かれるようになったが、都井岬周辺ほどではない。相変わらずの頻繁なアクセルワークを繰り返す走航ながら、ジェットコースター走航を楽しむ余裕もでてきた。(つづく)


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