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荒れ狂う宮崎の 大淀川河口沖


暗く、ドヨ〜ンとした海。ああ、太陽が恋しい!

 

 それにしても太陽が恋しい。随分と長いこと、毅然とした太陽にお目にかかっていない。8月の上旬、夏の真只中である。大平洋高気圧は、いったい何をしているのだろうか。頭上には、重苦しい雲が次から次に覆いかぶさっていく。

 陸上にはフェニックスロードと呼ばれる気持ちのよさげな海岸道路が走っている。しかし、海側から見ると無気味な断崖絶壁の海岸線がガスに煙っているだけである。黙々と長い波長のうねりを上っては下り、上っては下りの単調な行程が続く。

 ただし、油津港の南、大島や七ツ岩などの島陰が見え始めると、海上の景色にも変化があらわれ、気持ちが少し和んできた。油津港は出発前の予定では寄港するはずの港だったが、様々なアクシデントの連続で各レグの行程を大幅に変更せざるを得ず、今回は素通 り。ここから宮崎港までは港らしい港はないので、海象によっては入港することも検討していたが、どうやらその必要はなさそうである。

 GPSと海図、海岸線を見比べながら、ひたすら北上を続けるが、なかなか宮崎港が近づかない。遠くの海岸線には鵜戸神宮や鬼の洗濯岩、青島といった日南海岸の観光名所が続くが、楽しむ余裕もない。ボストンホエラーの船上では、2人の男が押し黙ったまま、黙々と波のショックを膝で逃がす作業を続けている。

 遠くの方に偉容な高層の建物が見えてきた。
「あれ、シーガイアじゃないですか」
「そうそう、間違いないですね」
「とういうことは、宮崎到着?」
「そういうことですね」

 にんまりした途端に、海がバッタンバッタンし始めた。ものすごい三角波である。右から左から、前から後ろから、複雑きわまりない波がぶつかりあい、ひしめき合っている。ボートはよろよろと斜めになり、傾いて、次から次に海水がデッキ上に打ち込んでくる。ビルジポンプは回しっぱなしである。


  海の色は茶色。どうやら、南東から押し寄せてくるうねりが、台風で大増水した大淀川の西側からの流れ込みとぶつかっているらしい。左手には北東に向って開いている宮崎港の入口が見えているのだが、どうにも近付けない。南東側からショートカットしようとすると、ブレイクしながら襲い掛かるおおきなうねりと共にコントロールの効かない状態で防波堤に激突しそうである。仕方なく、思いっきり沖出しして向い波を受ける形で、港の入口を目指す。

 ほうほうの態で防波堤の中に入った途端、波はピタリとおさまった。またまた、ガクンと腰が抜けたようにシートに座り込む。こんなのばっかりである。

 時間は17時30分。50マイルの所要時間は4時間45分。平均時速は結局約10ノット程度になってしまった。
(つづく)


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